咀嚼・嚥下状態の低下により食事が摂取しにくくなった方へ
2016年9月 7日 12:00
高齢に伴い咀嚼力の低下や食事や水分でむせたり、うまく飲み込めなくなる嚥下障害が多くなっています。そのままにしておくと、食べ物や飲み物を充分に摂取できずに栄養や水分が不足し、体力低下・脱水症などを引き起こします。また食事をすると咳き込むという認識がされ、食事や水分を摂取すること自体に恐怖心を持ってしまい拒否につながる可能性があります。食事中に何度もむせてしまう、うまく飲み込めずに口の中から出てきてしまうといった症状がありましたら早めに受診し、嚥下障害の有無を確認しましょう。
また、症状に合った調理の工夫をすることで食べやすくなるため、今回はご自宅で出来る調理の工夫についてご紹介します。
➀良く煮て軟らかくする・食べやすい大きさに切る
ご飯が食べにくい時は水分を多めに炊く、またはお粥を作る。おかずも主食と同じで家族と同じメニューでも素材の大きさを変えたり、軟らかく調理すれば食べやすくなります。
★おすすめの調理方法
・適度に水分を保ちながら調理ができる(煮込む・蒸す・圧力鍋など)
②注意したい食材
●サラサラした液体:水・お茶・汁物・ジュースなど
●口の中でバラバラになるもの:かまぼこ・そぼろ・こんにゃく・ゆで卵など
●パサパサしたもの:パン・カステラ・高野豆腐など
●口の中で貼り付きやすいもの:のり・わかめ・最中の皮・ウエハースなど
●粘りが強いもの・噛み切りにくいもの:たこ・いか・ごぼう・れんこん・餅・団子など
※これらの食材はムセたり、のどに詰まったりする危険性が高いため食べるときは注意しましょう。
③食材別の食べやすくする調理の工夫例
・主食…ご飯は水分を多めにして軟らかく炊くかお粥を活用する。パンは牛乳をたっぷり含ませたフレンチトーストやパン粥などがおすすめです。
・肉類…お肉は赤身肉よりばら肉の方が脂分で柔らかく仕上がります。しゃぶしゃぶ用の肉などは薄く食べやすいです。またお肉に片栗粉をまぶして茹でると、つるりと飲み込みやすくなるのでお試しください。そぼろは食べにくい食材のひとつですが、ひき肉にすりおろした玉ねぎや山芋。パン粉・牛乳などをつなぎとして使いやすく練った物を蒸したり、煮込むと食べやすいです。

・魚類…焼き魚は身がパサつきやすいですが、煮魚や水分が逃げない「ホイル焼き」の方が食べやすいので活用しましょう。小骨はのどに引っかかりやすく危険なため、丁寧に取り除くか刺身用の魚などを上手く活用しましょう。骨まで軟らかく加工された缶詰もおすすめです。
・野菜・果物類…皮は厚めにむき、芯や筋は取り除いてからじっくり時間をかけて煮る、隠し包丁もおすすめです。またマヨネーズや白和え・胡麻和えなどの和え衣を活用すると、適度にまとまり食べやすくなります。
・豆腐・乳製品・卵類…絹ごし豆腐はなめらかでそのままでもおいしく食べられます。牛乳やチーズを使用したグラタンは適度にまとまりがついて食べやすい料理のひとつです。色々や食材を軟らかくグラタンの具にすれば栄養バランスも摂れおすすめです。卵豆腐・茶碗蒸し・プリンなどはのど越しもよく食べやすいのでおすすめです。
④とろみを上手く活用
・サラサラの液体には、とろみ調整食品でとろみをつけてムセを予防しましょう(とろみの程度については専門家に相談して下さい)。ゼリー飲料やゼラチンなどで固めてもムセ予防が出来ます。
・食材にあん風のとろみをかけるのも口の中でバラバラするのを予防してくれます(水溶き片栗粉でとろみをつけるのも有効的です)。
・前回も紹介した「やわらか食品」を活用するのもおすすめです。
今回は飲み込みやすくする調理の工夫について紹介しましたが、安全に食事をする上での姿勢も重要なポイントです。座った姿勢が傾いていたり首が反り返り、顎があがった状態ではムセやすくなりますので確認して見ましょう。