~介護現場におけるコミュニケーションテクニック~
2021年6月16日 10:24
こんにちは、日を追うごとに湿気と暑さが厳しくなる頃、皆様健康にお過ごしでしょうか。今回は、介護職員が普段からご利用者さんとのお話しや関わり合いの中でさり気なく行なっている、コミュニケーションの技術の中から、幾つかご紹介して行こうと思います。
突然ですが、「あなたは介護職に向いている。」、と言われたことのある方、結構いらっしゃるのではないのでしょうか。一般的にそんな方々に共通するのは〔優しい〕という事だと思います。そして優しさを感じる時というのは、ゆっくり話を聞いてもらえた時、悲しい時そっと寄り添ってもらえた時など、いわゆる「分かってくれた」という瞬間に最も感じるものだそうです。そこで、職員側からの「共感したい」をどのように伝えているかが今回ご紹介するお話しです。
介護職員は日頃からご利用者さんに接する中で、経験則から、あるいは感覚的にご利用者さんとのコミュニケーションを行ないます。しかし、それらはれっきとした技術であり、才能や感性といったものとは別に、意識をすることで身に付けられるものなのです。これから日々のケアの中で多く目にする代表的な技術を言語と非言語に分けて7つほどご紹介させて頂きたいと思います。
1.非言語コミュニケーション
①アイコンタクト
言わずと知れた、目線を合わせる、というものですね。少し付け加えるなら少し遠めに視界に入り、近寄って目を見て頂く。こうする事で、全体像から認識してもらえ、ご本人の集中力が若干あがります。
②タッチング
触れるという行為は、かなりの近距離になります。また、触れ方で受ける印象も随分変わります。指先に力を入れてガッと掴めば恐怖を感じますし、手の平からそっと包み込むように触れると安らぎを感じます。
特に日本人は人と触れ合うことが極端に少ない国民性もあり、触れるという行為にとてもナイーブです。しかし、過去の介護福祉士の実技試験において「寝たきりの高齢者へ出来る限り適切な介護を行なう」といった趣旨の問題に、5分間「ベッドの横に座り手を握り続ける」という行動をとり合格した話もあるくらい、介護の現場で重要視されている手段です。
③馴染みのある音楽、音を使う
聴覚は人間の中で最も原始的で強烈な感覚です。その時に聞いていた音楽に沿って記憶が引き出されることもあり、ご本人も楽しめる方法です。また、雨音や雷の音、風の音などから過去の経験がよみがえる事もあります。
2.言語コミュニケーション
①クローズドクエスチョンからオープンクエスチョンへ
会話の始めは「はい・いいえ」で応えられる質問から始まり、徐々に「いつ・どこで・誰が・何を・どのように」で応える質問を増やします。この時1つの質問の答えは1種類になるように心がけて下さい。また、「なんで?なぜ?」は事実ではなく感情に繋がる質問なので上手く答えられないかもしれません。
②リフレージング(オウム返し)
ご本人が使う言葉を「しっかり聞いています、伝わっています」と伝えたい時に行ないます。ご本人が使う単語や文章だけを指すのではなく、時には方言や話す速さも真似ると効果的です。中には「馬鹿にされている」と感じる方もいらっしゃいますので、ご注意ください。
③好きな、あるいは嫌いな感覚を探す
こちらは文章では少し分かりにくいかも知れません...
多くの人は、興味のある話になるとに好き嫌いに関わらず饒舌になります。そして、ご高齢の方はご自身の経験したお話をされる際に、自然と得意な感覚の話が多くなります。例えば同じ食べ物の話でも、臭いの話(嗅覚)、色の話(視覚)、味の話(味覚)などどんな感覚が多く出てくるかで、何の話題が弾むか、または避けた方がいいかの見当をつける事ができます。
④「今までで1番」と比べて
例えば、嬉しい事、悲しい事、楽しい事、好きな事、嫌いな事...etc.、そんな感覚的な話が出てきたときは、関連する「今までで1番」の話を聞いてみて下さい。「痛い」とき、「今までで1番痛いですか」と訊ねると「そんなことはない、1番大変だったのは~」なんて話が始まったり、意外なお話を聞けることもあります。
いかがだったでしょうか。今回の話はバリデーションと呼ばれ、介護の世界では主に『承認』という意味合いで使われています。ご高齢の方々はご自分に自信が持てなくなっている方も多く、少しでも理解してほしい・共感して欲しいのです。少しでも高齢者の方々が持つ、それぞれの世界観やストーリーに触れ、お互いに認め合うきっかけになればと思います。
最期まで読んで頂きありがとうございました。