年金の繰り上げ、繰り下げについて
2024年2月18日 09:56
多くの高齢者にとって年金はなくてはならないものです。長寿国となった日本においては老後に必要な資金需要が増えることから、長く働き年金保険料を納め、その分増えた年金を受け取れるような改正が順次実施されています。
今回は2022年4月より改正された「繰り上げ」「繰り下げ」について解説します。
年金は原則65歳から受給開始となります。
①繰り上げについて
★これまで
60歳の時点で受け取れますが、減額率がひと月0.5%あり、最大ひと月30%の減額となっていました。それが生涯続きます。
★2022年4月より
減額率がひと月0.4%に縮小され、最大ひと月24%の減額に留まります。それが生涯続きます。
②繰り下げについて
★これまで
70まで受け取りが延期できて、増加率がひと月0.7%あり、最大ひと月42%の増額が見込まれました。それが生涯続きます。
★2022年4より
75歳まで受け取りを延期できるようになり、最大でひと月84%の増額が見込めるようになりました。それが生涯続きます。
大事なのはここから・・・
損益分岐点という言葉をご存じでしょうか?
「何歳以上まで生きていれば、総受給額が65歳受給開始を追い越すか」という指標です。
(繰り上げの場合は、【追い越されるか】に読み替えます)
繰り上げの場合 約21年後
(例 60歳から受給した場合)、81歳で追い越されます)
繰り下げの場合 約12年後
(例75歳から受給した場合、87歳で追い越します)
総受給額で判断すると、就労の有無、健康寿命など様々な要因が絡み、「早くもらえるから」「増えるから」と安易に選択すると後悔に繋がります。
さらに繰り上げ、繰り下げにはデメリットも存在します。
繰り上げのデメリット
・任意加入や追納ができない
・障害基礎年金や寡婦年金が受給できない
繰り下げのデメリット
・加給年金が受給できない
・所得税や社会保険料負担が増える
・各種給付の所得制限にかかる可能性が高くなる
賢く受給するための豆知識
1,国民年金と厚生年金を分けて考えて繰り下げを検討する(繰り上げは同時が原則)
2,長寿傾向や年金額が少ない傾向の年下女性配偶者の年金のみを繰り下げて増やし、夫婦としての年金月額や総受給額を判断する
年金は「長生きに備える保険」であり、損得だけではなく、ライフプランに沿って冷静に受給開始時期を選びたいですね。