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認知症治療薬「レカネマブ」について

2024年6月 5日 11:33

 2023年9月25日、新しい認知症予防薬レカネマブ(商品名:レケンビ)が、厚生労働省に薬事承認されました。レカネマブはアルツハイマー病の原因物質に直接働きかける世界ではじめての治療薬として大きな期待が寄せられています。期待が高まっていますが、一方で、注意点もあります。注意点などについてまとめました。

投与の要否の判断にあたっては、以下の①~⑤すべてに該当するアルツハイマー病による「軽度認知障害」及び「軽度の認知症」の患者であること。

① 患者本人及び家族等の、安全性に関する内容も踏まえ本剤による治療意思が確認されていること。

②本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴がないこと。本剤投与開始前に血管原性脳浮腫、5 個以上の脳微小出血、脳表ヘモジデリン沈着症又は 1 cm を超える脳出血がないこと。

③ MRI 検査が実施可能であること。

④ 認知機能の低下及び臨床症状の重症度範囲が、認知機能評価 MMSE スコア 22 点以上及び臨床認知症尺度 CDR 全般スコア 0.5 又は 1であること。

⑤ ①~④を満たしたうえで、アミロイドβが蓄積されていること。

 以上の要件を満たすレカネマブの投与対象となる患者は、認知症患者全体の1割未満という研究結果もあります。

そのうえで、レカネマブの重篤な副作用として、約13%に脳の腫れ、約17%に脳出血の副作用が見られています。ほとんどは、それほど大きな症状ではなかったようですが、一部は重篤な脳出血や死亡例もあり、問題になる可能性はあると思いますので考慮する必要があります。

また薬価の問題があります。レカネマブは非常に高価です。この価格について、中央社会保険医療協議会は、患者1人あたり年間およそ298万円と設定(体重50キロの人の、1回あたりの価格を約11万4千円と想定)しました。ただ、一度レカネマブを投与してアミロイドが減っても、徐々にまた増えていくことが予想されます。引き続き何度も治療する必要が出てくるかもしれません。とは言え、医療保険が適用されるため、自己負担額は1~3割となります。また、医療費が高額になった場合、所得に応じて一定額が払い戻される「高額療養費制度」の対象にもなり、実際の負担は70歳以上の一般所得層(年収156万~約370万円)では、年間14万4千円となる見通しです。

さらに通院も負担になってきます。レカネマブは、点滴で投与する薬で、一度治療を始めると2週間に1度、原則1年半の間、点滴を受けることになります。そのほか、副作用を早く見つけるため、脳の画像診断などの大掛かりな検査も定期的に継続しなければならず、その都度の費用も負担になります。

このように、レカネマブを開始するためにはかなりのハードルをクリアしなければならないにも関わらず、グラフを見る限り、アミロイドの蓄積を劇的に軽減することは分かりますが、臨床認知症尺度CDRスコア上、プラセボ群と比べて緩やかにはなるものの、改善することはなく低下しています。アミロイドの蓄積の減少とは裏腹に、実際の認知機能の改善等の効果は、あったとしてもそれほど大きくはないようです。おそらく、ご本人や家族から見ても効果を感じる可能性は低いのではないでしょうか。つまりレカネマブはあくまでも進行を抑える薬であり症状を改善させたり、元に戻したり、進行を止めるという訳ではないということです。

こうしたことをよく理解した上で、医師と適切な治療を行っていく必要があります。

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